お盆の大人数料理、どう回す?|元ホテル料理人の前日・当日段取り術

盛り付け済みの皿を重ねて冷蔵庫へ運ぶ宴会場の段取りのイラスト 今日の献立レシピ

こんにちは、元プロ料理人のくりさんです。

お盆の帰省シーズン。親戚が集まって、気づけば10人分のごはん係——「全部その場で作らなきゃ」と思うと、正直しんどいですよね。

先に答えを言ってしまいます。お盆の大人数料理は、当日に全部を作るのではなく、「冷やしておくもの」「下ごしらえまで済ませるもの」「食べる直前に加熱するもの」の3つに分けると回ります。ホテルの宴会場でも、事前準備と温度管理によって、提供直前の作業を絞っています。この記事では、私が宴会場で学んだ段取りと、それを家庭のお盆に落とし込む方法をお話しします。

宴会場のコース料理は、「提供直前の仕事」を絞っています

ここからは、私が勤務していたリゾートホテルの宴会場での一例です。施設や料理によって工程は異なりますが、何十人分を同時に、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく出すために、仕込みと盛り付けをできる限り前倒しして、提供直前の作業を必要最小限にしていました

もちろん、ただ置いておくわけではありません。冷たい料理は冷蔵、温かい料理は温蔵で、提供までの温度と時間を管理するのが大前提です。プロの大量調理では、すぐに提供しない料理は冷たいものは低温で、温かいものは高温で保つ、という考え方が基本になっています。

前菜:お客様の入場前に、盛り付けは終わっている

「お客様が入場してから盛り付けてる」と思ってる方、いらっしゃると思います。実は、お皿への盛り付けは入場前に終わっています。

盛り付けたお皿に輪っか(皿の間に挟むリング)を乗せて、その上にまた盛り付け済みの皿を重ねて……5段くらい重ねたら冷蔵庫へ。これを10人分、宴会によっては100人分単位で用意しておきます。提供のタイミングが来たら、サービススタッフがそのままお客様の元へ運ぶだけ。

スープ:「温蔵庫」で温かいまま待機

「じゃあスープは?」——こちらは温かいまま待機です。

でっかい寸胴で用意しておくか、スープカップに注いだ状態で、温蔵庫(温かいまま保管する庫)へ。「温蔵庫!?」と思った方は、飛行機の機内食をイメージしてください。あんな感じです。

肉・魚:焼き始めるのは「前菜が出た瞬間」

肉と魚は火入れがあるので、ここは当日勝負です。ただしタイミングが決まっていて、前菜が出たタイミングで焼き始めます

そして付け合わせの野菜は、先に盛り付けた皿を大量に準備しておく。提供の直前に、焼き上がった肉を切って盛り付けて、ソースをかけて仕上げる。直前にやるのは「火入れと仕上げ」だけなんです。

デザート:アイスクリームだけ「あと乗せ」

デザートのお皿も、焼き菓子やフルーツは盛り付け済み。「でもアイスクリームが一緒に乗ってるよね?」と思った方、鋭い。あれはアイスクリームだけ先に一人分ずつ丸く取り分けて、冷凍庫で保管しておき、提供の直前に準備済みのデザート皿へ盛り合わせるんです。

誤解してほしくないのですが、これは手抜きの話ではありません。何十人分を温かく・美しく・同時に出せるのは、「準備」と「温度管理」の勝利なんだ、ということをお伝えしたかったんです。

家庭のお盆に翻訳すると:「3つに分ける」だけ

宴会場の段取りを家庭用に訳すと、料理を3つに分けます。

  1. 冷やしておくもの:事前に準備しても品質と安全を保ちやすいものだけ、清潔な容器に入れてすぐ冷蔵庫へ(飲み物・市販のゼリーなど)
  2. 下ごしらえまで済ませるもの:切る・下味までやって冷蔵庫へ。仕上げは当日(揚げ物の具材など)
  3. 食べる直前に加熱・仕上げするもの:麺類・揚げる工程・盛り付け(宴会場の「火入れと仕上げ」と同じ)
料理を冷やす・下ごしらえ・直前加熱の3つに分ける図解イラスト

ちなみに、金曜30分の作り置き4品の記事でも書きましたが、「先にやっておく」は平日でもお盆でも最強の味方です。ただし夏は、次の注意だけ守ってください。

夏の事前準備で守りたいこと

8月は、できあがった料理を室温に長く置かないことが大前提です。保存する料理は清潔な浅い容器に分け、ふたやラップをして速やかに冷蔵庫へ。冷蔵庫は詰め込みすぎると冷えにくくなるので、7割程度を目安に空きを作り、庫内は10℃以下を保ちます。食卓へ出すのは食べる直前にして、食べない分は冷蔵庫に。

また、生の肉や魚に使った手・包丁・まな板を、洗わずに薬味や果物に使わないこと。これは家庭での食中毒予防の基本です(考え方は厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント(PDF)」に沿っています)。

わが家のお盆の実例だと、こうなります。

  • そうめん:先に終わらせるのは「麺以外」と決めています。めんつゆを作り、薬味を切って、器まで冷やしておく。麺は食べる直前に茹でて、流水でしっかり冷やして盛り付ける。茹でたそうめんの作り置きは傷みやすいので、夏はやりません(そうめんの飽き対策は素麺アレンジ7選もどうぞ)
  • 揚げ物:具材を切って下味まで済ませ、ふた付きの容器で冷蔵庫へ。粉・卵・パン粉をつけるのは揚げる直前。生の肉や魚を扱った包丁・まな板・手は、果物や薬味に触れる前にしっかり洗います
  • スイカ:切る前に皮を流水で洗い、清潔な包丁とまな板で食べやすい大きさに。ふた付き容器かラップですぐ冷蔵庫へ。食卓へは食べる分だけ出します

わが家では、時間で3つに分けます

  • 前日まで:献立と人数を決める/器と取り箸を確認する/飲み物を冷やす/冷蔵庫の空きを作る
  • 当日朝:めんつゆ・薬味を準備する/揚げ物の具材を切って下味/スイカを切って冷蔵
  • 食べる直前:そうめんを茹でる/衣をつけて揚げる/料理を食卓へ出す
前日・当日朝・食べる直前の段取りタイムラインのイラスト

こうして直前にやる仕事を絞ると、10人分でも台所が回りやすくなります。

私にとって、帰省の料理は「仕事じゃない」から楽しい

「せっかく帰省したんだから、料理なんてしないでのんびりしたい」という方もいると思います。それでいいんです。

ただ、私の場合は逆で——料理を作っている時が楽しいんです。しかも仕事ではないので、何をしてもいい(笑)。失敗しようが、笑って話せる。

白状すると、そうめんの結束帯を外し忘れたまま、ひと束を鍋に入れてしまったことがあります。気づいてすぐ引き上げて、その束は食べずに処分しましたが——引き上げたその姿が、姪っ子のおさげと完全一致。親戚一同の大爆笑をかっさらいました。顔から火が出るくらい恥ずかしかったですが、いまでは毎年の笑い話です。

元プロでもこれです。だから、お盆の大人数料理も気負わなくて大丈夫。段取りだけプロの真似をして、あとは笑って食卓を囲んでください。

「そもそも献立を考えるのがしんどい」という日は、はらぺこAIに手伝わせてください。長くなりましたが、お読みいただきありがとうございました。良いお盆を!

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